yamさんへの応答

yamさんから10/27のコメント欄で、重要な問題提起をいただきましたので、本文で応答します。

yam 『まず質問と疑問を。

  • 低正味、てのはなんでしょうか?つまらない質問で申し訳ない。
  • 市場均衡価格、というのは本に限らずあるのでしょうか?(経済学のテキストのなかでしか通用しない仮想のものではないか?)

本の場合、市場が小さすぎ(つまり、卵や、烏龍茶や、ビスケット、靴下。。)などとは商品が異なりすぎる。著者Aの署名BBという本がどの店でいくら、あの店でいくら、という情報が任意の顧客に容易に定額制はいる場合に意味ある言葉で、ほとんどの商品でこんな情報は存在しない(海外では本の価格を比較しているサイトもあるけれども、あくまで狭い範囲)。アマゾンとネット古書店で8割以上本を購入している私としては、再販とか非再販の論議の焦点がよくわからなかった。日本の、ほとんどの一般消費者にとっての最大の問題は、市場にどのような本があるか分からない、ということだとおもう。アマゾンのような販売組織からの情報ではなく、純粋にどの分野でどんな本があるのか?を見せるサイトが欲しい。(私はアマゾンをそういう調査目的で使っている)。購入するかどうかは図書館にその本があるか、と十分役に立ちそうか?などで決めるが、日本のアマゾンの情報はお粗末すぎる。米アマゾンのようにカナリの部分内容や索引を読ませてくれなければ安心して買えない。再販問題以上に、情報提供をしっかりやってくれなければ困る(書籍とは、情報サービスなんだから。Sonyの新商品を買う場合に何が新しいの?どういう商品なの、がわからなくて買う人間などいまい?本は一品一品が新商品なのである)。』 (2005/10/29 11:21)

>低正味、てのはなんでしょうか?つまらない質問で申し訳ない。
書店の入り正味というのは、価格に対して75%から80%前後であり、業界ではそれを「通常正味」と言っています。これより低い正味のことを「低正味」と言っています。因みに、医学書や理工書の場合は85%以上とかの「高正味」でかつ「買切」というのがあります。

>市場均衡価格、というのは本に限らずあるのでしょうか?(経済学のテキストのなかでしか通用しない仮想のものではないか?)
もちろん厳密な意味での「市場均衡価格」などはありません。比喩的な意味で遣っているだけで、「再販制」批判派が「価格の競争」を主張することへの同じ土俵での再批判で遣っているだけです。
その意味で言えば、量販店での価格競争も市場操作的であると思いますね。つまり、かつて「投げ銭システム」で試行実験したような意味で、消費者が購入満足度によって価格を決めるということで言えば、市場において消費者が価格を「自由に決めている/決めるべきだ」という主張は、「市場万能主義者」によって操作された「錯覚」にしか過ぎないと思います。価格を決めているのは、メーカーであり小売店なわけです。「自由価格本」の「自由」とは非再販本の価格を書店が自由に決めているという意味でしかない。
消費者主権が成立するのは、購入者が「買うか/買わないか」の二者択一の場面に瞬間的に現象しているだけで、そこでの価格は購入動機の「条件」ではあっても「本質」ではないと思います。可処分所得の条件を別にしても、「高くてもいいものは買いたい」という欲望が本質ですが、この「欲望」も市場操作的であることに注意を喚起しておきます。
では「割引」が持つ意味とはなんでしょうか? 例えば本の場合で言えば、読者が読みたい内容の本が2000円の価格に対して、1500円でディスカウントされていると「得した」という気分になって購買力はアップするでしょう。これは読者が、本の内容に対して2000円の価格が相応であることを認めているから500円の割引が得をさせているのであって、単に割引されているから購入したいのではないでしょう。だから本の場合は「再販価格」が適正にされているかが問題となりますが、これは10/27のエントリーで書いたように、読者による値踏み(値頃感)によって、適正か否かの「価格競争」は事後的にされているとみなしていいのではないでしょうか。
量販店などでの二重価格が問題になっていますね。どういう仕組かというと、当初設定の売価に対して高め目の売価を二重に表示して、さも値引きしているように見せて購入動機をそそる販売手法です。これは明らかに不当な価格表示ですね。しかしこのような手法によって消費者に訴求できる商品は限定的だとは思います。賢い消費者は、このような二重価格を見抜くでしょうから。
この意味で言えば出版物の「再販制」のメリットは、予め二重価格を否定していることでしょうか。
>再販問題以上に、情報提供をしっかりやってくれなければ困る(書籍とは、情報サービスなんだから。Sonyの新商品を買う場合に何が新しいの?どういう商品なの、がわからなくて買う人間などいまい?本は一品一品が新商品なのである)。
まったく同意見ですね!「版元ドットコム」http://www.hanmoto.com/では、版元間の情報の共有公開を目指しています。また取次の日販のhttps://www.honya-town.co.jp/P3/CM/html/bookclip/new/shoseki/under.htmlでは近刊情報、トーハンhttp://www.e-hon.ne.jp/bec/SE/Genre?dcode=01&ccode=01&taishongpi=NEW&listcnt=1では最新の新刊情報を知ることはできますが目次までは記載されていないようです。また自費出版も含めて世界中の書籍情報を一覧でリアルタイムで見るサイトの構築は課題であるにしても、現状では技術的には無理だと思います。
★追加記述★新刊情報の件に関して、葉っぱ64さんのコメントがありウラゲツさんのエントリーの紹介(http://urag.exblog.jp/2223488/)があったので、本文でも記載してトラックバックしておきます。