leleさんへの応答

また「再販制論議」かぁとウンザリしている方は、いま暫くご容赦ください。

leleさんのコメントを転載
おふたり(葉っぱ64さんと黒猫房主のこと。転載者註)ように長い出版経験がないので、差し出がましいことはいえませんが、直感的に感じるのは、現在のような経済状況の元で、「再販制」と「文化」を結びつけて論じる人びとへの違和感です。「文化」を盾にして「再販制」を維持することにより、どこぞの業界関係者が利権を保持し、消費者が損をするのであれば、そんな「再販制」なんて必要ないと思います。版元の場合、「再販制」がなくなり、出版業界における護送船団方式が崩壊した場合のモデルケースを、「再販制」がなくなる前から実践しているトランスビューの活動が参考になります。私自身は、書籍や雑誌であっても、特例で再販売価格を維持するのではなく、一般の商品のように自由価格にしてもよいと考えていますし、そういう時代が到来しているとも思います。ただし、それが成功するか失敗するかは、まったく予想がつきません。「再販制」をやめたらよかった、となるかもしれません。イギリスのように、やめたらひどくなった、となるかもしれません。いずれにしても、その選択肢となるカードは、政府や業界が持つのではなく、消費者が持つべきだと思います。

>どこぞの業界関係者が利権を保持し、消費者が損をするのであれば、そんな「再販制」なんて必要ないと思います。

ここで言われている「利権」とは具体的には何を指すでしょうか? おそらく大手版元や老舗版元の仕切正味や取次からの支払方法による優遇のことであると思いますが、これは確かに「利権」と言えるものであって、僕も書店・取次・版元が「公正な競争」によって「適正な利益」を確保できるように是正すべきだと思います。しかしそのことは「正味問題」や「取引条件」の問題であって「再販制」の有無とは無関係です。

>版元の場合、「再販制」がなくなり、出版業界における護送船団方式が崩壊した場合のモデルケースを、「再販制」がなくなる前から実践しているトランスビューの活動が参考になります。

トランスビューさんは、取次を通さない「書店直販」を主流としそのことによって書店マージンをアップしていますが、「非再販本」を刊行しているわけでも店頭での値引きがあるわけでもありません。また一部の取次との口座もありますから、取次による流通を全面否定しているわけでもないようです。トランスビューさんの実践は「委託制」の改良と「正味問題」の改善であって、「再販制」の可否を問うているわけではないでしょう?
ちなみに、書店直販による委託販売は他にも永岡書店さんを筆頭に珍しくはありませんが、どこも再販制による定価販売です。
ところで「委託制」というのは、売れ残った場合に書店から版元に条件付で返品できるという商ルールのことで、これは「法定再販制」とは無関係のルールと僕は理解しています。だから、「非再販本」の委託配本は可能なわけです。
というかすでに、取次経由で「非再販品」は流通しています。ビデオ・DVD・ソフト・カレンダー等々、これらの商品には原則「定価」の表示をしないこと(価格○○円とか、本体のみの表示)で「非再販品」であることを明示していますが、ほとんどの書店店頭での値引きはされていないでしょう? なぜか、仕入正味が高いか、値引きして売ることの煩雑さに比して売上増大のメリットがないからかも知れません。★註

>いずれにしても、その選択肢となるカードは、政府や業界が持つのではなく、消費者が持つべきだと思います。

その前に批判派は、「法定再販」が悪法でかつ消費者において重大な損害を与えているという証明をすべきだと思います。それから、とにかく規制緩和で「法定再販」を廃止すればそれで流通問題が解決するというような発想および言動は「幻想」であることを、僕はこの間指摘しているのであって、僕はゴリゴリの「再販護持派」ではありませんので誤解なきように願います。
それと重要な点ですが、「法定再販」は版元を規制する「法的な義務」ではありません。これは「再販指定してもいいよ」という独禁法の除外規定なのです。
しかしleleさんはご自分が苦慮されて付けた「定価」は、「適正」だと思っているのではないですか? 僕の経験から言っても、原価率からしてギリギリの苦慮された「定価」だと思います。しかしそれが内容に比して「適正」でなければ、本は「売れない」ということで消費者がそのような選択をした結果になります。
つまり、すでに/つねに店頭での購入の選択肢は消費者にあるわけですから、これは再販品であろうと非再販品であろう同じことだと思います。
★追加記述★いわゆる量販店での「非再販品」の値引あるいはオープン価格には、価格競争している割にはというか、その故にか、新製品についてはほとんど差異はなくなっています。客による店頭での値引き交渉も、まず受け付けませんねぇ。狙い目は「見切り品」とか、客寄せの「目玉商品」ですかぁ(笑)。
★註:紀伊國屋書店内のDVD専門コーナーでは割引販売しているとの情報がありましたので、訂正いたします。しかし書籍棚で本と一緒に販売しているスポーツ系のDVDやビデオは値引きされていない書店が多いと思います。「買切」扱いのカレンダーやソフトについては、見切り品で値引きするケースはありますね。