丸山真男の戦争責任論

また竹内好の「戦争責任について」から丸山真男の戦争責任論を孫引きすると、

……丸山真男が、戦争責任論の方法論について感想を述べ、その中にヤスパースの罪の分類を、全部に賛成ではないと断って引用した。(……)丸山の問題整理の方法についての提案も、今後に生かされると思うので概略を結介しておく。「私は大体四つの点から、戦争責任の観念を区別して考えたらどうかと思うのです。」第一は、誰に対する責任かということをハッキリさせること。たとえば自国の国民に対するのと他国に対するのと。後者はさらに英、米、ソ、中国、アジア諸民族などに分かれる。第二は、責任を負う行為の性質による区別。たとえば錯誤や過失による責任と犯罪に対する責任のちがい。第三は、責任自体の性質による区別。ここに範疇区分の例としてヤスパースが引用される。第四に、主体の地位および職能による差。たとえばリーダー、下級リーダー、追随者といったもの。また積極的協力者と受益者は区別しなければならない。

★追加記述★ここでの丸山の特長は、「誰に対する責任かということ」を明確にしていることです。「形而上的責任」において責任を引き受ける個人の「罪の清め」を言っているヤスパースよりも、はるかに実践的だと思います。