『イヴの総て』

昨晩、500円DVDの『イヴの総て』(ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督、1950年製作)をジュンク堂書店で購入、早速観ました。DVDケースの惹句にある通り「スターの栄光と内幕を絶妙に描写した傑作」でした(画像は500円DVDとは別のメーカーのもの)。
主演のマーゴ役のベティ・ディヴィスが凄みがある。もうひとりの主演のイヴ役のアン・バクスターは知的で清楚な美人だけに、その彼女の隠された野心と策略が明かされる瞬間、その清楚さが効果的に悪女に反転する。そして遂に彼女は演劇界のスターの座を獲得するのだが、その夜イヴの元には彼女に憧れているという女子高校生が現れる。それはまるでマーゴに近づいた過去の自分が再来しているようだった……。そのラストシーンでイヴをスターにした黒幕でもある演劇評論家は、この女子高校生の登場にちょっと驚きながらも(あるいは軽い眩暈を感じながら)ドアの外でイヴの所作(総て)を学ぶようにと呟いてエンドとなるのだが、これは第二のイヴが変奏反復されることを予兆している。だが実はイヴにとってのマーゴも、同じような反復をしていたのかも知れない。ドラマは反復変奏されることによって、その始まり(起源)を用意しているようにも思える。ちなみに、スターになる前のマリリン・モンローが、初々しいチョイ役で出ているのを見落とさないように(笑)。
この映画を僕は、20年前のいまはなき名画座大毎地下劇場」で二本立の一本として観ましたが、まったく旧さを感じない映画がでしたねぇ。この二本立てのもう一本が『ル・バル』ですが、この映画も印象的でした。
そこで以前に、「カルチャー・レヴュー」31号で「映画多彩」という特集で映画のアンケートを募り、数十人の方からの回答を掲載しましたが、そのうちの僕の回答を下記に転載します。因みに下記のWebサイトでは、全回答がご覧いただけます。アンケートの質問は下記の通りです。http://homepage3.nifty.com/luna-sy/re31.html#31-3

Q:いわゆる「名画」とは限らない、私にとって決定的な影響を与えた映画や想い出深い映画、あなたのお薦めの映画、印象深い映画など3点を挙げてください。
A:映画名・監督名・その映画についての簡単なコメント(コメントは無くても可です)。回答者名は、匿名も可です。

僕はそこで、次のような回答をしました。

(1)『ル・バル』(エットーレ・スコラ 1983)
ダンスホールにスイッチが入れられ舞踏会(バル)が始まる。シャンソン「待ちましょう」にのって女たちが階段を降りてくる。「ボレロ」にのって男たちが。この展開がすばらしい。以下台詞は一言もなく、なつかしい四十数曲をちりばめて、このダンスホールの戦前からの移り変わりが、回想的な手法で描かれていく(双葉十三郎のコメントより)。十数年前に私が東京から大阪に転居してきて、毎週のように梅田の「大毎地下劇場」(名画座)の二本立てを観ていた頃の印象深い作品。いま一度観たいと思っているが、VTRは品切で入手不可の模様。
(2)『あらかじめ失われた恋人たちよ』(田原総一朗清水邦夫 1971)
いまでは誰も信じないかもしれないが、あの田原総一朗が東京12chのディレクター時代に監督した作品。華奢な石橋蓮司の演技が痛々しくかつ眩しい。緑魔子がワンシーンだけ出てくるのが嬉しい。桃井かおりのデビュー作品。つのだ☆ひろの名曲「メリージェーン」が、この映画の主題歌。
(3)『鬼火』(ルイ・マル 1963)主人公ロネの孤独感と絶望感に共振した。エリック・サティの「ジムノペディ」がさらに空虚さを増幅した。いまはなき池袋の「文芸座」で20代に観た。
番外『アクマストキングⅢ』(土方鉄人 1977)
 騒動社という独立プロ製作。騒動社で検索すると上記のタイトルにヒットしたが、私が大学祭で観たのは七七年以前のはずなのでⅢではないのかも知れない。ストーリーは全然覚えていないが、映画と同名の主題曲「悪魔巣取金愚」のフレーズ「悪魔ストッキング、ドゥドゥビドゥ」のリフレインをよく覚えている。この主題曲が「休みの国」というCDに収録されていることをウェブで知り、今回アマゾンでゲット(URC復刻シリーズ)。ちなみにバックの演奏は、ジャックスの早川義夫や角田ヒロらが担当。

この回答の隠しテーマは、もちろん音楽です。
ところで、「大毎地下劇場」の「大毎」というのは「大阪毎日新聞」の略称で、その当時のその映画館は「毎日新聞社大阪本社」の地下にあったのです。現在のアバンザの場所です。