福祉ヘルパーの賃金


佐々木さんは、「私は1600万人に及ぶ非正規雇用労働者(安くいつでも首にできる)の土台を成す派遣労働を法律にし度重なる改悪を重ねてきた勢力を天才的悪魔だと思っている。あたかも江戸時代の士農工商エタ卑民の差別政策に似ている。だが実は出口ははっきりしている。介護報酬を国家公務員福祉職を参考に引き上げる以外にない」と書かれていますが、同感ですね。
以下、転載します。

第223号                      2007年12月4日
           
週刊/ALS患者のひとりごと
 
 
今日は/お世話になります
発行 佐々木公一  ブログ http://blog.livedoor.jp/alsinfo/ ホームペー
ジ http://www.arsvi.com/0w1/sskkuic.htm  メールアドレスhamu-s@jcom.home.ne.jp

ヘルパーの賃金
 いまハローワークの福祉コーナーに行くと一人の休職に対して5人の求人がある
という。つまり1人のヘルパーを5つのステーションなどが奪いあうという状況だ
という。ヘルパーが足りない、募集しても来ない、福祉系職場に深刻な悩みが広が
っている。当然ながらそのしわよせは患者=利用者に集中する。必要な時間にヘル
パーがいない、なにもできない。命の危険もある。


 では福祉労働者は奪いあわれるほど恵まれているのか。答えは反対である。いま
すべてのヘルパー(常勤、非常勤あわせて)の平均月収はわずか13万円という。
あるデイサービス職員(男37才、生活相談員、大卒)の10月の給与明細だ。支
給 基本給 205,000 役職手当 10,000 残業 6,721 通勤 2,000 計
223,712 控除 健康保険 9,840 厚生年金 17,995 雇用保険 1,342 所得税
2,800 住民税 6,800計47,777 差引支給合計 175,936


 昨年度(06年)の統計でいま日本に328万人の福祉労働者がいる。だが昨年
度20%が増えたが実に28%の人たちが福祉現場を去っている。昨年新たに47
万人が介護福祉士の資格を取得したが、27万人しか福祉現場で働いていない。他
方で要介護要支援高齢者は410万人、加えて現在日本の障害者は600〜700
万人いる。恐らく数百万人単位でヘルパーなど足りないだろう。なお日本の非正規
雇用労働者は1600万人、労働者の3人に1人、その平均賃金は約103万円。
深刻な格差社会を構成する。その中に福祉労働の大半が含まれるという異様な現実
がある。


福祉労働者の賃金はなぜ安いか
 日本の労働市場は、終身雇用制度の崩壊と細分化された労働時間(細切れ時間
の切り売り、パートや派遣、フリーター、非常用雇用が常態化している)によって
労働条件が悪化した。このため労組の組織化が困難になり、労組が弱体化した結果、
雇用者との交渉力が低下した。国も労組も電気・機械・自動車・鉄鋼など大手企業
の論理で労働条件を計測している。つまり、労働生産性・効率性・収益性だけを基
準に価値判断をしている。


 福祉や医療産業、あるいは農林漁業のように労働集約的で生産性基準だけで評価
できない分野は低賃金が当たり前のようになってきた。最近考えられない企業モラ
ル・モラルハザード(企業倫理、労働モラルの低下)がニュースになる。社会の安
定や安寧、さらに、自然環境保護、人命尊重は企業の論理では解決されないのであ
る。森や水、海、空を守る理念と平和と命を尊ぶ快適な社会とは共通の理念や制度
で結ばれていなければならない。


 医療や福祉の制度は、個々の命と幸せを保障するだけではなく社会そのものを
維持存続させるものである。従って北欧諸国のように国も企業もそれぞれも目標は
生まれて死ぬまでの過程(乳児、学童の健康と教育、さらには就業、老後)一人ひ
とりの諸権利を保障することを行動規範にしなければならない。そのための制度、
政策の確立が必要であろう。 田村久平中央学院大准教授


あとがき
 福祉労働の賃金について中央大学の先輩田村さんに聞いた。本来市場原理にそぐ
わない福祉労働(憲法を貫く中心理念/いわば福祉労働は国の第一義的義務の代理
執行者でもあるのです)を市場にもちこむ政府と資本の意図に無理があるのです。
その結果90年代以降深刻で膨大な格差社会の下層部分に福祉労働を引き入れるこ
とになります。私は1600万人に及ぶ非正規雇用労働者(安くいつでも首にでき
る)の土台を成す派遣労働を法律にし度重なる改悪を重ねてきた勢力を天才的悪魔
だと思っている。あたかも江戸時代の士農工商エタ卑民の差別政策に似ている。だ
が実は出口ははっきりしている。介護報酬を国家公務員福祉職を参考に引き上げる
以外にない。